螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2013/7/19 Fri 07:38
果たして物に魂は宿るのか


話題:怖い話


今もあるのかは知らないがどこの学校にも7不思議ってものがあって

音楽室のベートーベンがどうの、あそこのトイレの三番目の個室に入るとどうの、体育館がどうの
と、怖い話が広まっていた

今は4つしか思い出せない

恐怖のあまり思い出せないのか、7つ知るのが怖くて途中で聞くのをやめたのか

たぶん両方だろう


中学生になり、色んな小学校の人間が集まる
調べてみたことがある

7不思議というものの傾向に興味を持ったからだ

だいたいどこの小学校も似たような話に集約される


だからほとんど忘れてしまったが
一つだけ気になる話があった

動く銅像の話だった

これもだいたい似たような話がある

放課後、忘れ物を取りに学校に戻った生徒が
動く銅像を目撃する

夜に銅像が走ってる


そんな類であったが、ある小学校のある人物の話はそれらとは一線を画していた


彼は神妙な顔をして語ってくれた
その年頃では痛々しいまでに自己をアピールする
そのために、話は盛られるのが当然な節がある
奇妙な体験をした特別感から彼もそうなってもおかしくなかった

しかし、彼は淡々としかしどこか怯えつつ話してくれた

その姿から彼の話はほぼ事実であることを感じさせた
そして、その話は事実は創作より奇妙だということを感じ俺に知らしめることになった



ある日、帰途についていた彼は宿題を教室に忘れたことに気がついた


すぐに学校に引き返した

その時点で6時過ぎ
秋も深まった頃で日も大方落ちていた

暗闇が学校を半分ほど飲み込み、昼間とは別の雰囲気を纏ったその校舎に彼が恐怖を感じるのはしかたながないことだった

急いで教室に入り、宿題をランドセルに突っ込むと

彼は教室を出た


その瞬間彼は視界の端に影を捕らえていた

彼の直感は、その影を危険と判断した
反射的に彼はその影とは反対方向に走った

彼の頭にはある噂話がよぎっていた

彼の小学校には銅像が4体も並んで、校舎入り口にある

その銅像の一つが放課後、校内を徘徊している
そんな噂だ


彼は走った

あれが銅像かどうかはわからない

しかし、何しろ恐い

例え人でもだ


運の良いことに走り出したその影の反対方向が、校舎の入り口であり出口であった

彼は走りだした
後ろを振り向かずに懸命に

その影が追い掛けてくる気配を感じとる余裕はなかった

しかし彼は確かに聞いたという

明らかに人間ではない

重い何かが動いている音を



ここまで聞いて俺は思った

なんだ結局、よくある類の話ではないかと

校舎にある銅像が徘徊する

どこの小学校にもある話だ


しかし彼の話にはまだ続きがあった


彼は走っているときに気づいたという

校舎の入り口を通るときに、その4体の銅像の方を見れば

どの銅像が徘徊しているのかわかるんじゃないかと


その恐怖の中、彼の好奇心は最大の働きをした


彼は走りながら校舎を出て、スピードを落とさず
4つの銅像を見た


そこには4つの銅像があった


彼は混乱した

ではあれはなんなのか

銅像ではないのか


常識的に考えれば彼が恐怖のあまり勝手に影を銅像と思い込んだ
そもそも影なんてなかったのだ


彼も幼いながらもそう考えたらしい

本当に奇妙なことは次の日、学校に行ったときに起こった

銅像が5体あった


彼は混乱した

彼は級友に言った

昨日まで4体だったのに増えている、と

しかし級友の誰もが口を揃えて言う
銅像は最初から5体だったと
教師さえもだ

そしてさらに奇妙なことに彼にも
どの銅像が新たに追加されたものかわからなかった



彼の話は奇妙奇天烈でものすごくおもしろかった

話す彼自身もよくわかっていないのがまたおもしろい

果たして最初から本当に4体だったのか、それとも5体だったのか

作り話にしては彼の表情の恐怖はできすぎていた

元ある銅像が徘徊しているのではなく

徘徊していた銅像を目撃したら、数が増えている
なんとも奇妙な話ではないか

単純にただの彼の記憶違いだろうと言えない奇妙さがそこにはある


事実は創作より奇なり



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