螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2015/7/5 Sun 04:24
窓を開けば


話題:突発的文章・物語・詩
26日分の

「おとなのなきかた」

大人は泣かないんだって、お母さんは言う。でも、私は知ってる。お母さんは夜、ひっそり泣いてる。
お父さんの泣いたところは見たことがない。お父さんは大人で男の人だから泣かないかな。一度お父さんに聞いたことがある。「どうして、お父さんは泣かないの?」って。そしたら、お父さんは笑いながら、こう言った。「男は人前で涙見せてはいけないんだ。男が泣いていいのは両親、おまえのおじいちゃんとおばあちゃんが死んだとき、大切な人が死んだときだけなんだ。でも、お父さんはできるだけ泣きたくない。お父さんの大切な人はおまえだ、だからお父さんより先に死んで泣かせないでくれよ。」
大人は大変だって思った。私はよく泣いてしまう。この前飼ってたピー子が死んでいたときも涙が止まらなかった。お母さんは泣きながら私を抱きしめてくれた。お父さんは泣かずに、ピー子を庭に埋めてくれた。そんなお父さんをカッコいいと思うんだけど、悲しいとも思う。ピー子が死んだのに、寂しくないのかな。
もし、私が死んだらお父さんは本当に泣いてくれるのかな。寂しがってくれるのかな。この前お母さんに聞いたら、泣きそうな顔で叱られた。


お母さんが死んだ。病気で死んだ。元々お母さんは身体が強くなかった。いつも辛そうだった。辛そうだったのに、泣いてる私をいつも抱きしめてくれた。
私は泣いた。ただ、泣いた。部屋が涙でいっぱいになって、溺れるんじゃないかってくらい。
お父さんは泣かなかった。大人の男だから?お母さんのことが大切じゃなかったから?
こんなこと聞いたら死んだお母さんに怒られちゃうかな。それでもいい。お母さんに会いたい。

お父さんは一生懸命働いている。お母さんが死んでからは、家のことも色々やってくれる。お父さんの料理は最近はおいしくなってきた。
私は今でもお母さんを思い出して泣く。お父さんはどうなんだろう。お母さんがいなくて寂しくないのかな。

ある日、私は車に轢かれて、気がついたら病院にいた。お父さんが私の手を握っていた。お父さんは私が気付くと、お医者さん達がいるのに、ボロボロ泣いた。お父さんは嘘つきだ。私が死ぬときに泣くっていってたくせに。私もボロボロ泣いた。お父さん、お父さん、お父さん。



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