2024-3-27 04:35
03/27 | 銀色の熱情
食べたしな……。食べた……。
ああ、まずい。私は今きっと、とても酷い顔をしている。
「ん……」
暖かい隣の体温がうめき声と共にモゾモゾと動き、天使のような表情で私を見上げた。
「おはよ、クォルツ」
「ああ。その……。身体は、大丈夫だろうか」
「久々にスッキリしたおかげか、すっごい調子いいよ。心配しすぎ。俺だってさ、少しは逞しくなってるんだから、朝からそんな死んだような目で見ないで」
想像していた酷い顔、とはまた違った。というよりも、それはいつも通りなのではないか。
ラピスの要望通り微笑もうと思ったが、残念ながら上手くはいかなかった。
「傷も問題なさそうだな……」
昨日かじったあたりを指でなぞる。
「ふふ、くすぐったい」
最中の興奮が冷めて、朝。恐怖を含んだような目で見られることもなく。本当に芯から、食べられることが性癖なのだなと。
「何? お腹空いた? ちょっとかじる?」
気軽にこういうことを言ってくるしな。しかも、目を輝かせながら。
「お前こそ、腹が空いているだろう。もう昼だ」
私でさえ、こんな時間まで惰眠を貪るほど疲れがあった。ラピスなら動けなくなっていてもおかしくない。しかし本人が言うように調子は良さそうだ。外見には現れていないが、実際、逞しくなっているのかもしれない。
「食べにいきたいのはやまやまだけど、今日はさすがに……自分で調達しないと」
「では今日こそ、魚を獲りに行くか?」
「それだと時間かかっちゃって、クォルツがキツイでしょ。やっぱ俺のこと、食べる?」
そこで自然に自分を選択肢に含めるのはやめてくれ。
「いや。それなら獣を狩りに行こう。私なら生肉をそのまま食べられる」
「外で生肉の直食いは、やんないほうがいいと思う」
「そうだな。火で焼くくらいはしよう」
「……せめて塩くらい使おうよ」
確かにそれくらいなら手間もかからないし、ラピスも食べることができる。
ずっと一緒にいるのに、そんな当たり前のことが出てこないのだから、人間との壁はやはり厚い。
「それにしても、防音魔法よかったね。魔石を使ってるのかな。これ、俺も使えたり買ったりできないかなあ」
「習得はできそうだが……。違うことに集中していたら、途切れるんじゃないか?」
違うことというのは、言わずもがな。
「……絶対そうなるね」
ラピスは神妙そうに頷いた。用途は私が想定していたもので間違いなさそうだ。
ああ、まずい。私は今きっと、とても酷い顔をしている。
「ん……」
暖かい隣の体温がうめき声と共にモゾモゾと動き、天使のような表情で私を見上げた。
「おはよ、クォルツ」
「ああ。その……。身体は、大丈夫だろうか」
「久々にスッキリしたおかげか、すっごい調子いいよ。心配しすぎ。俺だってさ、少しは逞しくなってるんだから、朝からそんな死んだような目で見ないで」
想像していた酷い顔、とはまた違った。というよりも、それはいつも通りなのではないか。
ラピスの要望通り微笑もうと思ったが、残念ながら上手くはいかなかった。
「傷も問題なさそうだな……」
昨日かじったあたりを指でなぞる。
「ふふ、くすぐったい」
最中の興奮が冷めて、朝。恐怖を含んだような目で見られることもなく。本当に芯から、食べられることが性癖なのだなと。
「何? お腹空いた? ちょっとかじる?」
気軽にこういうことを言ってくるしな。しかも、目を輝かせながら。
「お前こそ、腹が空いているだろう。もう昼だ」
私でさえ、こんな時間まで惰眠を貪るほど疲れがあった。ラピスなら動けなくなっていてもおかしくない。しかし本人が言うように調子は良さそうだ。外見には現れていないが、実際、逞しくなっているのかもしれない。
「食べにいきたいのはやまやまだけど、今日はさすがに……自分で調達しないと」
「では今日こそ、魚を獲りに行くか?」
「それだと時間かかっちゃって、クォルツがキツイでしょ。やっぱ俺のこと、食べる?」
そこで自然に自分を選択肢に含めるのはやめてくれ。
「いや。それなら獣を狩りに行こう。私なら生肉をそのまま食べられる」
「外で生肉の直食いは、やんないほうがいいと思う」
「そうだな。火で焼くくらいはしよう」
「……せめて塩くらい使おうよ」
確かにそれくらいなら手間もかからないし、ラピスも食べることができる。
ずっと一緒にいるのに、そんな当たり前のことが出てこないのだから、人間との壁はやはり厚い。
「それにしても、防音魔法よかったね。魔石を使ってるのかな。これ、俺も使えたり買ったりできないかなあ」
「習得はできそうだが……。違うことに集中していたら、途切れるんじゃないか?」
違うことというのは、言わずもがな。
「……絶対そうなるね」
ラピスは神妙そうに頷いた。用途は私が想定していたもので間違いなさそうだ。
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