いつか、泳いでいってしまうのだろうと思っていた。
浅い透明な海岸から、暗く黒鉛のごとき深海まで。
その広大な海原をひとり、進んでいく大きな魚なのだと。
たったひとりで世界を守ろうとしたその人は、あっけなくその世界によって裏切られ、浜辺に打ち上げられてしまった。
だからこそ、自分がすくい上げることができたのだろう。
すっと伸びてきた指先が、緩やかに髪の線をなぞっていく。
手入れなどろくにしていない、ただ伸ばしているだけのそれ。
だというのに、義息にとっては、なにか特別な意味を持つらしかった。
「……楽しいですか」
「ん? そうだね……楽しいよ」
同じ色合いであるものの、微妙に彩度の異なる髪色。
血はつながっていないとはいえ、そうと知らぬ者からは実の親子と思われることも多い。
「ずいぶんと、お疲れのようですね」
「……ええ、まぁ」
夕食に誘われ、いつものように友人宅へ伺うと、常にないぐったりした様子のズミに出迎えられた。
常に完璧を目指す彼は、めったなことのない限り、疲れや苦悩の感情を表に出そうとしない。こうもあからさまに疲労感を前面に出しているとなれば、なにかあったにに違いなかった。
とある山の頂上付近。キャンプを張って就寝前、深い夜空を見上げていた。
山の夜は暗い。人工的な明かりの一切ない、真の暗闇だ。
心の弱いものであれば、あっという間に呑み込まれてしまいそうなほど。
かつて、シロガネ山で修業に耽っていた時だってそうだ。
挑戦者らしき相手が、自分の元に辿り着いたときには満身創痍。そんなことは珍しくなかった。
山が神格化され、崇め奉られていたのも頷ける。それほどに、山は孤独と向き合わされるのだ。
「……目を開けたまま寝るには、まだ早いんじゃないか」
チャンピオンフェスタイベント、開催されましたね!
Twitterにもちょろっと書きましたが、
今回のイベントのストーリーもとても良かったです…!
「ほら、可愛いだろう?」
ぐい、と目前にさし出された子猫――もとい、チョロネコ。
まだ生まれてまもない、ふさふさとした紫の毛並み。
開いたばかりの瞳は、本来の鋭さは影を潜め、あどけない可愛らしさを発している。
「か……まぁ、そう、だな」
「うわぁ……なんど見ても、ここはスゴイなぁ」
町の一帯を占める飛空場を見上げ、Nが感嘆の声を上げる。
農業で成り立つ町、フキヨセシティ。
その半分を占めるフキヨセカーゴサービスはこの地方における物流の中心をなしている。
こうして見上げている間にも、機体が滑り込んできては飛び立ち、飛び立ってはまた滑り込むを繰り返していた。
「…………」
「…………」
「そんなにみられると、穴が開きそうなんだけど」
午後三時、交番内。
いつもは騒がしいニャースたちも、昼寝ですっかり静かになった室内だ。
大の大人が二人、向い合せにソファに座っている。
パソコンに向かってダラダラと仕事を続けている自分。それに、この島を拠点として活動していたスカル団の元ボスの青年の二人だ。
「もう、プラズマ団にしがみつくのはやめたんですか?」
「……ッ!?」
穏やかな秋の夕暮れ時だ。
人目から隠れるように構えられたこのセッカシティの森深くの一軒家。
リハビリの一環として庭先で歩行練習をしているところに、聞きたくない声が飛び込んできた。
さすがに、更新する短編のストックが尽きてきました…!
天才文字書きさんの感情漫画で800字チャレンジのお話がありましたが、
コンスタントに毎日あれだけ作品を完成させられるのはマジですごいですね…
あのお話自体は創作とはいえ、実際に練習している方はいらっしゃるんでしょうし…
私も一応、習慣化が大事と知って以来、なるべく週6で執筆作業をしているのですが、
あの作中みたいに命を削って…というのは…できないですね…根性がないので…。
※注意※
ここからは文字数自慢が含まれます!
そんな話聞きたくねぇ! って方はプチっと閉じてくださいませ!