吊り橋

地震にあったのは
オフィスでの残業中。


揺れ始めた時、上司が
「鮎川くん、きた、地震、」と言った。

僕は外部通信用のPCデスクの前にいた。
そこはスチールシェルフに囲まれて、ゴツい電子機器もたくさんある。
上司にすぐ出て来るよう呼ばれた。

立っていたせいで揺れに気づかず、僕は半信半疑で呼ばれるまま歩み寄って行った。
すると、途端にガタガタと音がするほどしっかり縦に揺れ始めて、みるみる怖くなった。



「デカイぞ、」

上司に手首を掴まれる。



僕は体から力が抜けてしまいそうだった。
膝に力が入らない。

そのままふたりでしばらく固まっていた。


揺れは思いの外続く。

「君は、ここにいて。
僕は一応逃げ道を確保しに行くから。
ここに、いて」

上司は、地震がトラウマ的に苦手な僕の様子をちらちら伺いながら、出入口の扉を開けに行った。


皮膚の表面はチリチリ痺れるようだった。


地震、こわい。