『少年の世界』






『少年の世界』


この町の高台に少年は立って町を見渡すと少年は溜め息を吐きながら呟いた。

「ふぅ〜……見てみなよアイリス、この世界の醜さを」

語りかけても彼女は答えてはくれない、それでも少年は気にせず喋り続ける。

「ここに住んで居る町の連中は、同じ仮面を被って同系色に染まって逝くんだよ…想像しただけでゾッとするでしょ?」

少年は両手を上げて高らかに言った。

「僕はそんな奴らと一緒になって逝くのは嫌だ!君だってそうなんだろ、全てを見たくなくてだから目を閉じてしまったんだろ?」

「何も聞きたくなくて、だから耳を塞いでしまったんだろ?」

「語ったって無駄だから、口を噤んでしまったんだろ?」

少年は振り返り寂しさを押し殺した声で「だから全てを捨ててしまったんだろ?」

少年の見詰めた先にはアイリスと彫ってある墓石がひっそりと佇んでいた。




END.