いつも有難うございます☆
今日初めましてのかたも有難うございます!
恩を仇で返すようですみません、水阿メモです。
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頭が痛いと言って机に顔を伏せた水谷は大人しかった。珍しいと思い黙って眺めていた阿部は、ふと手を伸ばして伏せたままの髪を撫でた。
…何すんの阿部、痛い。
わざわざ顔を上げてへらりと笑う水谷の眉が少し歪んでいる。きっと心配かけまいとしていつもみたいに笑ってみせたんだろうが、それすらもしんどいんだろう、馬鹿な奴。と阿部は頭の中でボヤいた。
馬鹿じゃないですー。
あ、聞こえてた?
…うん
……
それ以上反論して来ないところを見ると余程の痛みなんだろう。阿部はまた水谷の茶色の髪を撫でた。そっと撫でているつもりだが、もともと大ざっぱな動きをしている阿部の手のひらは、端から見れば軽く頭を叩いているように見えた。だから横にいた花井は水谷を不憫に思った。
おい阿部、今日くらいそっとしといてやれよ。
は?…何でだよ?
何でって、痛がってんだろ。
…おー。
黙った阿部は、眉間にギュッとシワを寄せて顔を上げない水谷の頭を睨んだ。
…睨むなよ、相手は病人だ。
わかってんよ!
うっせえ、ハゲ。と八つ当たりされて花井は溜め息を吐いた。心配なのはわかるが、本人に自覚が無いのが困る。クラスにいるときの水谷はとにかく阿部を構いすぎているが、今日は逆に阿部が水谷を構いすぎている。
なんだか俺まで頭が痛いと花井は言った。違う意味で。
なんだ、花井もかよ?
あからさまに水谷のときと違う態度で阿部は席に戻って寝てろと言った。
水谷がビックリして顔を上げた。
あ…阿部、オレには言わないの?
は?
席に戻れって。
あ?…それお前の椅子だろが。
でも阿部の机。
いーよ別に、(どーでも)
…えへへ
キモッ
何故だか嬉しそうな笑顔を見て少しだけ安心した。
阿部の左手が水谷の額に伸びる。
…お前さ、熱あんじゃねえの?
え、…無いよ
何でわかんだよ?
何ででも…、熱は無い。
やけにキッパリと言う水谷を訝しげに眺めた。
その視線を勘違いした病人は、またへらりと笑う。
えへへ
んだよ。
…阿部の手、冷たくて気持ちいい。
馬鹿なこと言ってないで、保健室で熱計って貰えよ。
えー、ヤダ。
はあ?
阿部って、手も冷たいけど言葉も冷たいよねー。
…悪かったな、冷たい人間で。
んーん。オレはその冷たさも好きだよ。
……ドM
んーん、阿部限定のMだよ。
は?
ぐだらねえ、と鼻で笑って額から手を離した。水谷は表情を歪めた。
あーあ、せっかく痛いの無くなってたのにー。
…手、あててるといいのかよ?
うん、治る気がする。
どうせいつもの冗談だろうと思ったが、それで治るならいいかと思った。
じゃあ、授業始まるまで貸してやっから、早く治せよ?
マジで?…努力します。
やけに真面目な顔で言うのが可笑しくてニイッと笑った。
水谷は、そんな阿部にキスしたいとボンヤリ思った。
思うだけじゃなく口から言葉が漏れてしまってグーで殴られた。
阿部は相手が病人でもそれが水谷なら容赦ないのだった。
*
それにしても、と阿部は部室に向かう途中で思い出したように呟いた。
クソレフトのくせに、何で熱ないって言い張ったんだろうな、花井。
突然話をふられた花井は驚きつつも答えてみる。
そりゃ、部活休みたくなかったんじゃねえの?
ああ?…そっか。
アイツもアレで野球好きだもんなあ。と納得した背中に向かって、後ろから追いかけて来る叫び声。
阿部んことも大好きだよー!
っ…恥ずかしい奴!
あはは、お前ら校庭の真ん中で仲良いなあ。
くそ、黙ってろ、ハゲ!
そーだよ、花井。これはオレと阿部だけの、ヒ・ミ・ツなんだかr
お前は一生黙ってろ、クソレフト!
えええー?
少し元気になってはしゃぐ水谷と、乾いた笑いで悟りを開く花井と、顔を真っ赤にした阿部は、今日も賑やかだ。
阿部がさー、チュウしてくれたらさー、きっと頭痛なんか吹っ飛ぶのにー。
頭沸いてんのが原因だろ。
えー?違うよー
じゃあ何だよ
風邪だろ
違うってばー
ああ、うぜえ
…愛が足りないんだよー
横から抱きついて来たクソレフトの、体温はやっぱり高くて。
阿部はいつもみたいに蹴り飛ばせずに、その体温を持て余す。
だから…、保健室行けっつってんだろ!
嫌ーでーすー!
何でだよ!
野球も阿部もシたいもん!
花井は吹いた。阿部は絶句した。動詞を間違えたことに気付いた水谷は、てへ☆と照れて笑った。
*
花井にモモカンへの伝言を託した。無理矢理連れて行った保健室。脇に挟んだ体温計は平熱を示した。
…ほーらね!
ね!じゃねえよ。なんなのお前?
わかんない。きっとストレス。
はあ?
阿部、手だけじゃなくて、ぜんぶ貸してよ
……
オレ、たぶん、
阿部はその先を予感してギュッと目を閉じた。顔を見ていられなかった。
(恋の病いなんだ)
…言うな!
えー!聞いてよ!
…ザケンナ
ふざけて無いよ、オレはいつだって真面目ですー。
……
阿部、オレたぶんね
…おー
便秘なんですよ。
……は?
…てへ。
……
あれ、阿部どうしたの?もしもーし?
このッ…クソレ、ブッコロス!
ぎゃー痛い痛いー!
頭痛な水谷の頭をグーで殴って阿部はさっさとグラウンドに戻って行った。
本当に阿部は容赦ないと笑って、一人保健室に残った水谷は、脇から冷えピタを剥がしてゴミ箱に捨てた。
布団を頭まで被って眠る。
あんな顔されたら冗談で告白なんかできないでしょ。と独りごちた。
頭が痛かった。
涙が出そうな程に
阿部の、冷たい手のひらを
恋しいと思った。
*
水谷?
部活が終わって保健室に迎えに来た阿部は、眠る水谷の額に手のひらを乗せた。
まだ熱は残っているが、さっきよりは手のひらと同じ温度に落ち着いたようだ。
…おい、起きねえと置いてくぞ。
……ヒドい
んだよ、起きてたのかよ
…いま起きた。
ん…おはよ
……ねえ、阿部、
…何
……
…泣くな
…泣いてないよ
泣きそうな顔をした水谷はそれでもへらりと笑った。
阿部はその髪をぐしゃぐしゃ撫でた。
阿部、痛い
…撫でただけだろ
え。それ撫でてたの?
は?
嫌がらせかと思ってたよ
……
オレ、阿部に愛されてんだねー
幸せそうに笑う水谷の頭は、もう痛まなかった。
代わりに垂れ目の捕手がじわっと泣きそうだった。
わ、阿部なに、泣いてんの
泣いてねえっ!
ええー?
よしよしと撫でた黒髪は汗でベタベタしていた。
オレが眠ってる間に阿部は練習に励んでたんだね、チュウしたいけど風邪だったらうつっちゃうから我慢するね。
だからお前はなんで冗談でそういうこと言うんだよ!
…阿部が赤くなって可愛いから
黙れ!
黙った水谷は我慢できずに鼻先を近づけた。阿部は目を閉じた。心臓がバクバクして飛び出しそうだった。
一瞬だけ触れた唇はすぐに離れて、それから初めて水谷は、冗談抜きで告白した。
阿部は順序が逆だと言って殴った。
でもあんまり痛くないグーだった。
*
帰り道、今度は阿部が頭痛を訴えた。コンビニの前で自転車を止めて、水谷はその左手を阿部の額に伸ばす。
…お前の手、生暖かくて気持ち悪い
ちょ、阿部ヒドい。
苦笑いした水谷の、手のひらが離れて、阿部はようやく理解した。ああ、これが噂の。
…恋の病ってヤツか。
阿部なに言ってんの
頬を橙に染めた水谷は、阿部の頭を心配した。
…水谷のが染った
マジで?
責任取れよ
え…あべ?
それって結婚ですかと言う水谷を一瞥して阿部はニイッと笑う。
まずは肉まんだな、それからココアも
え、ちょ、阿部?
責任取って温かいもの奢れよ
ああ…そーゆーこと…
他に何か?
いや、別に
…また手のひら貸してやっから
え。
頭痛くなったらな。
……!
歓喜の余り声にならない叫びを上げた水谷を一人残して阿部はコンビニに入って行った。花井が心配そうに声をかける。
水谷は?
あー…
アイツ何やってんだ。
…さあな
……つーか阿部、顔赤い?
っ…黙ってろ、ハゲ!
あはは、良かったな。
何がだよ
何でもねえよ。
ポンポン頭を撫でて花井は先にレジに向かった。
水谷が慌てて飛び込んで来る。
阿部は俺のだからね!
っ…何言ってんの、お前
あはは、良かったな。
鼻息荒く威嚇する水谷の頭もポンポン撫でて花井は田島たちの方へ戻って行った。
何、あれ?
…さあな。悟りでも開いたんじゃね?
ハゲだからな。と真顔で言う阿部は少し不機嫌だ。水谷はそんな阿部を可愛いと思った。
阿部、ヤキモチ妬いた?
は?誰が
えへへ
…くそっ
俯いた阿部の手のひらを水谷はそっと握った。
阿部の手、冷たくて気持ちいい
お前のは暖かくて気持ち悪いんだよ
うん、知ってる
…ばーか
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終われ
頭痛な水谷の額に冷たい阿部の手のひら、その手のひらの冷たさが好きな水谷。ただそれだけを書きたかったのですが。
なんだこれ。(笑、うしかない)
…orz
お目汚し失礼しました!;
m(_ _)m
読んでくださったかた、ありがとうございます!*
だいすきです!
足跡付けてくださったかた。拍手パチパチくださったかた。ありがとうございま!*
元気をいただいてます。がんばります☆