スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

サカベの日☆



いいサカベの日、おめでとうございます!!

え、24日だからベサカ?いや、でも私は右阿部のほうが萌えるので、サカベで☆(*・∀・)ノ←

というわけで、いつもツイッタで満足してしまって放置してたブログの存在を思い出したので、唐突ですが。
サカベなメモに初めて挑戦してみました。
本当はずっと前から挑戦してみたかったのですが、なんだかんだで今さらようやく。

(栄口の死生観とかそんなことは微塵も考えたことがない阿部。)

ちっとも甘くなくてすみません。
むしろ暗いです。(>_<)





-------------------------


始まりがあれば終わりがある。
生きているものはいつか死ぬ。
高校野球は3年生の夏まで。始めたときから終わりの時期がわかっていることに安心する。


阿部と初めてまともに話したのは西浦高校の入学試験のときだった。
その時のことを阿部は今でも面白そうに、あいつはウンコばっかしててさあ。ってニヤニヤ笑って話す。他にもっと話すことあるだろ。

阿部は酷いやつだよ。



お母さんっ子だった僕はスタンドの母に良いところを見せるために野球をがんばった。その母はもういない。
母に見せられない野球は味気なく、高校では野球を続けないはずだった。それが、西浦を見学に来たときに気持ちが変わった。
荒れたグラウンドの草むしりをしていた百枝監督に声をかけられて、僕の中に"高校でも野球部に入る"という選択肢ができた。
同じ西浦を第一志望にしていると聞いて、声をかけた阿部が、野球部に入ると聞いて、心が決まった。

同じ中学でもクラスは別でったし、特に仲が良かった訳でも無く、阿部とはたまにか話をしなかったけれど、西浦で入る予定の野球部の話をする時はいつも、キラキラした目をしていた。眩しかった。だから憧れたのかもしれない。

でもひとつ、気にかかっていたことがあった。しばらくモヤモヤしていた後、思い切って直球で聞いてみたら、驚く答えが返って来た。

阿部は誰かにかっこいいとこ見せたいからがんばったりとか…ある?
…はあ?んなの考えたこともねえな。誰が見てようと見てなかろうと関係ねえだろ。試合中はそんな暇ないし。捕手はいろいろ考えること多いんだよ。

気付くと阿部は目をキラキラさせて、捕手はいかに頭を使うかっこいいポジションかという話になっていた。

ふーん。阿部は本当に純粋に野球が好きなんだね。
はあ?…純粋…かどうかわかんないけど、でもまあ野球は好きだし捕手が一番かっこいいよ!

阿部は笑顔で言った。
その笑顔が眩しくて、僕はまた目を細めた。

闇は光に敵わないし、雲空もいつか晴れる。
もっと簡単に言えば、
僕はその時、阿部に惹かれた。

受験当日は緊張のあまりお腹を壊し、散々阿部にからかわれたが、なんとか乗り切った。今までの勉強の成果を腹の不調により出し切れなかった感のある僕は、帰り道ひどく落ち込んでいたけれど、阿部には気を遣って欲しくなかったから、なるべくテンション上げて話しかけたりした。今思えば、無駄な幼い見栄だったけど。

どうだった?阿部のことだから、ヨユー?
あー、まあ数学は完璧だな。
そっか。さすがだね。俺は解きながらお腹ゴロゴロしてさー
あー、お前、休憩の度にウンコばっかしてたもんなー。
あはは、ほんと困ったよ。つーか、それ、学校で言わないでよ?
は?なんで。ウンコのどこが悪いんだよ
いや、…阿部ってデリカシーないよね
はあ?!
…ごめん、言い過ぎた。

それから少しの間、黙って歩いていた。
なんで僕が謝らなきゃいけないんだろう。阿部は悪気ないのは分かってるけど、試験当日にお腹壊すメンタルな僕が悪いのかもだけど、でもやっぱり、もう少しだけ気を遣ってくれたっていいと思うんだ。
チラリと隣の垂れ目を睨んだら、阿部もこっちを見ていて、焦った。慌てて視線を逸らそうとした目の端で、阿部の腕が動く気配がした。次の瞬間、僕の肩がバシッと叩かれた。痛い。怒って口を開くより先に、阿部の声が聞こえた。

まあ、栄口ならいつもの7割でも西浦は合格だろ。
…へ?
俺はもちろん十割で自信あるけどな!
あ、うん。

なんだ励ましてくれたんだ。叩き方が乱暴で肩がちょっと痛かったけど。阿部ってもしかして不器用?
口隅が上がって、お腹がジンワリ暖かくなった。
阿部ってデリカシーない酷いやつだけど、実は優しいのかな。

まあ、ウンコばっかしてたから七割かどーかもわかんねーけどな。
……

前言撤回。
やっぱり阿部は酷いやつだよ。

一応それから第二志望、第三志望も受けたりしたけど、お腹を壊したのは西浦の時だけだった。なんでだろう。それだけ本気だったのかな。

それから無事に揃って合格。
春休みに、西浦のグラウンドを二人で見に行ったら、監督に再会した。
阿部はマウンドを作る作業を手伝うと言った。その目はまたキラキラ輝いていた。
土を盛る作業は体力的にとても疲弊したが、心はひどく満たされていた。

マウンドを足で慣らしながら、阿部はここに立つ投手はどんな奴だろうな?と言った。
また、キラキラした目で。

僕は曖昧な笑顔で、良い投手だといいね。と答えた。
モヤモヤと胸に違和感を覚えた。
僕は、まだ見ぬ投手に嫉妬していた。

4月になればチームメイトができる。できないと野球できないしそもそも部活の存在が危ぶまれる。だからそれは喜ばしいことだ。
けれど阿部を独り占めできたこの春休みの数日が、僕にはとても暖かく、他に代え難い大切なものに思えた。

もう母はいないけれど、野球をまた本気でやりたいと思えるきっかけをくれた、キラキラした目を持つ捕手。酷いやつだけど純粋に野球が好きで、たまに少しだけ優しくて、
だけどやっぱり酷いやつだよ。

母さん、僕は、高校でも野球部に入るよ。今度は、見せるためじゃなく、やっぱり僕も野球が好きだから。
だから、見守っていて。空の上から。


春休み最後の日に、僕たちは出来上がったマウンドを眺めていた。

部活が始まるのは楽しみだけど、春休みが終わるのはちょっと寂しいね?

と控えめに言ってみた。

は?別に。どうせ他にやることねえし、早く野球してえ。

それはそうだけど、やっぱり、阿部は酷い奴だよ。

どうした?さっきから変だぞ、栄口
え?
ウンコか?
……阿部ってホントにデリカシーないよね…
はあ?
そんなこと言ってると女の子に嫌われるよ?
興味ねーし、…つか、話チョーずれた。

阿部は決まり悪そうにそっぽを向いた。
その横顔が、なんだか知らないけどちょっと可愛く思えた僕は、うっかり口を滑らせた。

いつか僕の隣からいなくなるかもしれないと思うと人を好きになるのが怖いっていうか虚しいよね。
なんだそれ。いなくなるかもしれないのは、お互い様だろ。

阿部は真っ直ぐ僕を見ていた。

僕は阿部の目が好きだ、

と思った。

本当に阿部は酷い奴だよ。
だけど時々、僕の中に無い答えをくれる、大切なチームメイトだよ。

だから、この酷い奴が、これからもずっと大切な人をなくすかなしみをしらないでずっと酷い奴のままでいられますように。

願わくば、阿部の大切な人の中の一人に僕がいて、ずっと隣にいられますように。


満開の桜の下で。

僕は、空に祈った。



-----------------------
END

お粗末さまでした!m(_ _)m




20131124


ちょっと、見返したら阿部がエスパーみたいに察しよすぎたからラストの方の台詞を訂正さました\(^o^)/
「好きにならなきゃいーだろ」
でも良いなと思いましたが、何番煎じかわからないのでこっちにしてみました。
つか、「」無いと読みづらいことがよくわかった…よ。

失礼しましたm(_ _)m


←prev next→